■ 議論の整理・・・
書籍,CD,DVDなどのコンテンツ財の市場は,すべての商品が同じように売れるわけではなく,一部の商品が爆発的に売れる「ウィナー・テイク・オール市場」であると言われている。「ウィナー・テイク・オール市場」とは,勝者独占方式とも言われ,トップに近いものが不釣り合いに大きな分け前を得る市場のことである。いくつかのベストセラー,ミリオンセラーと呼ばれる作品の影には,手に取られることもなくただ据え置かれている,多くの作品があると言うことである。最近は経済,バイオ,インターネットなど様々な分野で,特に多数の要素がたがいに影響しあって微妙な均衡を保っていると考えられる場合に「べき乗則」が見いだされるという研究が数多くなされている(*1)。
■ 問題発見・・・
では,書籍,CD,DVDの市場においても,「べき乗則」が観察できるのだろうか。
■ 論証・・・
貴学総合政策学部の井庭崇教授は,オンラインストアの書籍,CD,DVDの販売量の分布について商品販売の実データ分析を行っている(*1)。その結果,月別の販売量と順位の関係性を時系列に並べると,書籍,CD,DVDのいずれの場合においても,すべての月でほぼ「べき乗則」に従っていることが示された。この分析結果が興味深いのは,商品の種類は日々入れ替わっているにもかかわらず,毎月この「べき乗分布」が生成されていることを示唆していることにある。また,各顧客の購買量と順位の関係もまた「べき乗則」に従うことが示されている。これらの「隠れた法則性」は個々人が単独で生み出せるものではないことから,社会レベルの創発的秩序だといえる。
■ 結論・・・
そこで私は,この特徴的なスケールを持たないとされる「べき乗則」が,他のどんな要素に表れているのかについて研究を深め,消費者行動との関係性を解明したいと考えている。
■ 結論の吟味・・・
貴学SFCでは,実践的かつ能動的なプロジェクトへの参加を主体としたカリキュラムを実践している。また,貴学の井庭崇教授は,書籍等の販売市場における隠れた法則性である「べき乗則」を発見した以外にも,創造実践学やパターン・ランゲージの新しい方法を見つけるなど興味深い研究実績があり,井庭崇研究会は上述の研究に最適な研究環境であると考える。それゆえ,私は貴学SFCに入学し井庭崇研究会に入会することを強く希望する。
(*1) 井庭崇,吉田真理子,森正弥.”書籍・CD・DVD販売市場における隠れた法則性”.第36回消費者行動研究コンファレンス(2008), 2008
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